はじめに
大規模な公立大学と小規模な私立大学はそれぞれに利点があります。
クレムソン大学卒業生の娘であるケイト・テッドフォードさんは、当初、両親と同じ道を歩んでサウスカロライナ州の大きな州立大学に行くことに抵抗がありました。その代わりに彼女は、小規模な私立大学やリベラルアーツ・プログラムのいくつかを候補に入れていました。
しかし、サウスカロライナ州フォートミル出身の彼女は、奨学金などを含めた経済的側面を総合的に比較すると、考えを改めました。 最初に選んだボストン・カレッジとワシントンD.C.のジョージタウン大学では、年間およそ50,000ドルの学費がかかります。クレムソンではどうでしょう?州内出身者用学費と奨学金によって、彼女の年間学費は4,000ドル以下だったのです。
決め手となったのは、クレムソンの学生の中で一部の優秀な学生だけへの待遇として、彼女が志望していた他の学校では得られない教授陣、特別コース、ガイダンスへのアクセスが得られるであろうということ(Honors College)でした。
「結局のところ、私が支払うことになる金額に見合う価値と、すべてのリソースを逃すことはできませんでした。」と彼女は言います。
減少する学生をめぐる大学間の競争が過熱する中、大規模な公立大学と小規模な私立大学で、優秀な学生の得る体験はますます似通ってきていることに多くの志願者は注目しています。テッドフォードのように、小規模校の特徴である学問的な厳しさ、緊密なコミュニティ、親密なクラス設定を求める学生たちも、公立大学のより少ない費用でも一部の優秀な学生向けへのプログラム(Honors program)などによって、上記のような従来の小規模校的選択肢を選べることを発見しているのです。
同時に、リベラルアーツ・カレッジでさえも、学士課程での研究、起業の機会、キャリアの準備など、伝統的に大規模大学で行われてきた実践的なプログラムを充実させてきています。州内公立大学の学費は私立大学よりかなり安いですが、私立大学も本当に望む学生に対しては、学費を大幅に削減することも多いです。
つまり、 例えば、フットボールの強豪校の文化や生活を切望するのであれば、結局のところ、小規模校の快適さを犠牲にする必要はないかもしれません。一方、逆もまた然りで、親密でセミナーの多いリベラルアーツ・コミュニティが最も居心地が良いと思うのであれば、卒業後の就職を容易にする実践的な経験を必ずしも諦める必要はないということです。
優等生待遇(Honors)の利点
現在、哲学とスペイン語を専攻する3年生で、移民法の分野でのキャリアを視野に入れているテッドフォードさんは、自分の選択にこれ以上ないほど満足しています。優秀生(Honors student)である彼女は、1学期に最低1つのオナーズ・クラス(Honors class)を履修し、GPA3.4を維持することが義務付けられています。
クレムソン大学では、オナーズ・プログラム(Honors program)に特化した奨学金は提供されていませんが、履修登録の優先権、文化イベントの無料チケット、教授陣との夕食会などの特典があります。
また、クレムソン大学では助成金を通じて学部生の研究、インターンシップ、学会旅行などを支援しており、テッドフォードさんは1年生の時にワシントンD.C.で開催された女性会議に出席するためにこの助成金を活用しました。その経験だけでも人生が変わったと彼女は言います。「とても力が湧いてきました。興味のあることを追求する気持ちに火がついたのです。」
多くの場合、学費の援助もあります。例えば、アーカンソー大学のオナーズ・カレッジでは、4年間をカバーする新入生奨学金や、留学や研究のための助成金を数多く提供しています。1年生はオナーズ専用の宿舎を利用することもできます。また、彼らの学問的道筋を導くための「フューチャーズ・ハブ」があり、ブロックチェーンなど最先端のトピックに関するセミナーやコースもあるのです。
シュトゥットガルトに住むメアリー・ジアさんは、アーカンソー大学や他の大学からのオファーを検討した際、授業料無料と奨学金支給というオナーズ・カレッジの契約に惹かれました。生物医学工学科の3年生である彼女は、希少な遺伝性疾患を治療するためのゲノム編集に関する研究を行っています。
学問の世界を志す者として、ジアは一流の教授陣へのアクセスに特に恩恵を受けていると感じています。大学4年次に中国に留学する計画が壁にぶつかったとき(大学は中国のプログラムと提携していませんでした)、工学部の学部長が彼の香港にある人脈をたどって、彼女が中国で勉強できるように手配してくれたのです
「上の人たちと連絡を取り、コミュニケーションをとても気軽に取ることができます。」とジアさんは言います。
STEM教育
成績優秀者に対する優遇は、オナーズ・プログラムだけではありません。メリーランド大学ボルチモア郡校のマイヤーホフ奨学生プログラムは、科学、技術、工学、数学、つまりSTEMの分野で博士号を取得しようとする多様な志願者、特にマイノリティやその他適切な評価を受けにくい学生に向けて、経済的、学業的、地域社会的な支援を提供しています。
学生は1年生になる前にサマー・プログラムに参加し、学部の研究を行わなければなりません。
このプログラムのディレクターであるキース・ハーモン氏は、「私たちはよく、STEMに対して内に秘める情熱を持つ学生を探している、と言います。」と話します。
マイヤーホフ・プログラムは、自然科学や工学の博士号取得者だけでなく、すべての修士号や博士号を取得する黒人の卒業生を輩出するNo.1のプログラムであり、ノースカロライナ大学チャペルヒル校やカリフォルニア大学バークレー校など、全米のキャンパスで実施されています。
マイヤーホフ・プログラムの使命の鍵は、競争よりも協力にあり、学生と教授陣の間に固い絆を育むことにあります。タルメシャ・リチャーズ=スミスさんは大変共感し、メリーランド州のジョンズ・ホプキンス大学やニュージャージー州のプリンストン大学への全額支援奨学金留学よりも、このプログラムを選びました。
「科学と工学は難しい挑戦です。キャンパス内に私のことを気にかけてくれる人がいることは、私にとって重要でした。」と彼女は言います。
例えば、学生はスタディーグループを作ることを強く推奨されており、リチャーズ=スミスさんは、それが彼女をより優れた科学者にしたと信じています。「それは間違いなく私を成功に導いてくれました。」と彼女は言います。
化学工学と数学の2つの学位を取得して卒業した彼女は、NFLのチアリーダーとして世界中を飛び回りながら、ジョンズ・ホプキンス大学医学部で細胞分子医学の博士号を取得しました。
学業以外の面でも学生の探求を奨励している、と彼女は言います。「私は経済的な面だけでなく、すべての面でサポートを受けることが出来ました。」
一方、小規模のリベラルアーツ・カレッジは、幅広い教育を受けると就職に不利になるというイメージを払拭するため、研究や起業など、より実践的な経験を重視しています。
「小規模校に行くと研究の機会がないと思われがちですが、大学院生の層が厚くないため、より多くの研究ができる場合もあります。」と、バージニア州リーズバーグにあるクリエイティブ・カレッジ・コネクションズの創設者兼CEOのハンナ・セロータ氏は言います。「そして、学生は単に補助業務だけでなく、学会で発表する機会も得ることができるのです。」
費用の援助
このような体験学習の機会を引き受ける学校は増えています。サウスカロライナ州にあるリベラル・アーツ・スクールのファーマン大学では、10人に8人の学生が学外インターンシップである“アウェイ”プログラムや学部研究に参加していますが、これらはファーマン・アドヴァンテージ・プログラムの助成金によって成り立っています。
ニューヨークのコルゲート大学も、学部生の研究や無給または低賃金のインターンシップに資金を提供しています。コルゲート大学の卒業生ジェイコブ・ワッツさんは、一年生のときに学生としての研究機会の幅広さに驚いたといいます。教授との何気ない会話から、ワッツさんは植物に興味を持ち、大学生活の大半を研究助手として過ごし、最終的には教授陣とともに植物生理学に関する論文を発表しました。
彼の研究は、学部生として多くの助成金や奨学金を獲得し、学者としてのキャリアをスタートさせることになりました。ワッツさんはチャーチル奨学金を受けて、イギリスのケンブリッジ大学で修士課程に取り組んでおり、ミネソタ大学ツインシティーズ校で博士課程に進む予定です。
「私の最終目標は、コルゲートのようなリベラル・アーツ・スクールの教授になることです。学部での経験がなければ、これまでのことは不可能だったでしょう。」とワッツさんはいいます。
起業家プログラム
ミネソタ州にあるマカレスター・カレッジでは、学生は教室内外で実社会の問題に取り組む方法を数多く選択することができます。例えば、アイデア・ラボと呼ばれる共同ワークスペースや、起業家としてのアイデアを実現する活動のための奨学金などを活用することができるのです。
2015年同校は、卒業生であるケイト・ライアン・レイリング氏を客員企業家に任命しました。最近退任するまで、彼女は起業家プログラムの戦略的方向性を決定する役割を担っていました。
起業家精神入門のコースで、レイリング氏は学生たちに、セントポールの冬の道路を満足に除雪できないといった厄介な問題の解決策を提示するよう求めました。このような問題は表面的には簡単に見えますが、みぞれの混じった雨の多い嵐、私道を持つ人々と市道に駐車している人々の権利対立、リアルタイムのコミュニケーション不足、英語を話せない住民の存在、など様々な要因によって複雑化している、と彼女は言います。
また、新たに設けられたイノベーション・パートナーズという課外授業プログラムはメイヨークリニックとともに先駆的に開発されたもので、さまざまな分野出身の学生がチームを作り、ミネソタ州の他大学の学生とともに医療企業の初期段階における発展に取り組みます。ビジネススクールの起業家コース、しかしより広い視点のものをイメージしていただけると良いでしょう。
イノベーション・パートナーズのアカデミック・プログラム・ディレクターであり、チームの指導教員でもあるリズ・ジャンセン氏は、「文化的背景、競争、テクノロジーの本質、生命倫理といった問題が検討されます。」と言います。
「皆さんは新鮮で、また、率直に言うと未熟な目を持ち込んで、リベラルアーツの力を活性化しています。」彼女が言うにはそれがアイデアの生まれ方なのです。
出典:Comparing Larger Public, Smaller Private Colleges
https://www.usnews.com/education/best-colleges/articles/similarities-between-large-public-smaller-private-colleges
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