はじめに
演技学校は、将来プロの俳優を目指す人にとって、単なる技術の習得の場にとどまりません。自分自身と向き合い、表現者としての在り方を探求する時間でもあります。
「俳優になりたい」と思ったとき、まず何から始めればいいのか、どのような学び方があるのか、どんな現実が待っているのか──この記事では、演技学校や俳優になるための道のりについて、専門家や現役俳優の声をもとに、じっくりと解説していきます。
「演じることが好き」から始まるキャリア
人前で表現することが好きで、観客を楽しませることに喜びを感じる。そんな気持ちを持っているなら、プロの俳優を目指す選択肢は十分に検討に値します。
演技学校に通って学位を取得することは、俳優としての基礎を築くだけでなく、演技業界での信頼性を高める一歩にもなります。特に、未経験から本格的に俳優を目指す人にとっては、体系的な教育を受けることが、大きな意味を持ちます。
演技学校に通うべきか?現場の声に耳を傾けてみよう
演技や映画、演劇の学位がなくても、俳優として成功することは可能です。実際に、独学や現場経験から道を切り開いた俳優も数多く存在します。
しかし、演技学校でトレーニングを受けた多くの俳優は、「自信」や「技術の土台」が確実に強化されたと実感しています。
たとえば、イギリスの名門演技学校「ArtsEd(Arts Educational Schools London)」で修士号を取得したラナ・ヤングさんは、金融業界でのキャリアを歩みながらもアマチュアとして演技を続けていました。そして30代になって本格的に演技を学ぶ決意をし、演技学校に入学。
「私は吸収する準備ができていて、すぐに飛び込めました。あの2年間は、私の人生で最も充実した時間の一つです」
「演技を本業にするには、自分の技術をより深く理解する必要がありました。そのためにはトレーニングが不可欠だったのです」
演技学校に通うことで、単なる技術の向上にとどまらず、表現者としての「自己肯定感」や「覚悟」を育てることができたと彼女は語ります。
名門校出身の俳優たちが示す道
世界で活躍する有名俳優たちの中には、演技学校で本格的に学んだ人が少なくありません。
たとえば、アカデミー賞受賞俳優のメリル・ストリープやアンジェラ・バセットは、コネチカット州にある名門「イェール大学ドラマスクール」でMFA(芸術学修士号)を取得しています。
また、アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツ(ニューヨーク&ロサンゼルス)では、スペンサー・トレイシー、ジェシカ・チャステイン、ダニー・デヴィートといった著名な俳優たちが訓練を受けました。
こうした学校は、演技力を磨くだけでなく、業界内でのネットワークづくりにもつながる環境として、非常に重要な役割を果たしています。
「成功=大金持ち」ではない、俳優のリアルな収入事情
一般的に「俳優=セレブ」というイメージを持たれがちですが、実際には地道な努力を重ねながら活動を続けている人が大半です。
アメリカ労働統計局の調査によると、2019年5月時点での米国俳優の時給中央値は20.43ドル。決して裕福とは言えない現実もあります。
そのため、多くの俳優は演技の仕事と並行して、教職、ウェイター、ナレーション、映像編集など、さまざまな副業で収入を補っています。
俳優を目指すなら、動機と覚悟が問われる
演技学校の教員たちは口をそろえて、「有名になりたい」「お金持ちになりたい」といった理由だけで俳優を目指すのは危険だと警鐘を鳴らしています。
「俳優というのは、自分自身を商品とするビジネスです」
― レイチェル・フリードマン氏(ニューヨーク大学ティッシュ校)
現代の俳優に求められるのは、与えられるだけの役を待つのではなく、自ら作品を創り出し、チャンスを掴みに行く積極性です。
何度もオーディションを受けても諦めない力
俳優を目指すには、精神的な強さと粘り強さが不可欠です。何十回オーディションを受けても結果が出ない、そんな状況にも耐えながら、なお挑戦し続けられる人が、最終的にチャンスを手にします。
カリフォルニア大学サンディエゴ校の演劇・ダンス学科で学部演技部門を率いるジェニファー・チャン氏はこう語ります。
「この業界は、最高の仕事にも最悪の仕事にもなり得ます。心の弱い人には続かないでしょう。
でも、物語を語ることを生業にするというのは、本当にかけがえのないことなんです」
学位だけでは通用しない。必要なのは「証拠」
演技学校で学ぶことには大きな価値がありますが、それだけでキャリアが保証されるわけではありません。
演技コーチのシー・ピーターソン氏はこう述べています。
「ポートフォリオ、宣材写真、演技リールは必須です。学位があるかどうかに関係なく、それらが揃っていなければ、業界では相手にされません」
俳優がエージェントと契約するためには、「すでに実績があること」が重要視されます。
実力を証明できる“証拠”がなければ、エージェント側も動きません。
非学位制のクラスやユニオン加入のタイミングも重要
テレビドラマ『パークス・アンド・レクリエーション』や『ハウス・オブ・カード』などに出演した俳優・プロデューサーのローレン・ホワイト氏は、非学位制のクラスも有益だと語っています。
「新しい技術や演技法を学べるのであれば、それは何でも価値があります。
特に映画やテレビ向けのオーディション対策クラスは、非常に実践的です」
また彼女は、演技ユニオン(俳優組合)への加入についても慎重に検討すべきだと指摘します。
「自分の技術が高まり、競争力のあるユニオン案件に挑めるようになってから加入すべきです」
良質な演技学校の環境とは?
良質な演技学校では、現場のプロから直接学べる機会が豊富にあり、パフォーマンスの場も多く設けられています。
身体、声、心理といった演技のあらゆる側面に焦点を当てながら、「本物の人間として演じるとは何か」を学びます。
UCSD大学院で演技プログラムを率いるウルスラ・マイヤー氏は、演技学校を「安全に挑戦できる場所」と表現します。
「演技学校では、自分がどんな俳優なのか、自分らしさとは何かを探ることができます。
自由に実験し、試行錯誤できる時間はとても貴重です」
演技学校の入試で問われる「真実味」
ニューヨークの名門・ジュリアード音楽院で演劇部門を率いるエヴァン・イオヌリス氏は、入学希望者に最も求める資質は「truthfulness(真実味)」だと話します。
「目の前に立つその人が、自分自身の声で、自分の身体で、心から行動している。
その瞬間に『これは本物の人間だ』と感じさせられる、そんな演技こそが本物なのです」
まとめ:俳優になるという生き方
俳優になるための道は、決して平坦ではありません。学費や不安定な収入、激しい競争、度重なる不採用──そのすべてを乗り越えてなお、「演じたい」と思えるかどうかが問われます。
ですが、物語を語ることで人の心に何かを届け、自分自身を表現するというこの職業は、他にはないやりがいと喜びを与えてくれます。
演技学校は、その夢への第一歩。覚悟と努力を携えて、ぜひあなたもその扉を叩いてみてください。
出典:All About Acting School and How to Become an Actor
https://www.usnews.com/education/best-graduate-schools/articles/everything-about-acting-school-and-how-to-become-an-actor
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