【アメリカ大学】米国の音大で学士号を得ることとは

はじめに

基本的に、音楽の学士号は音楽に情熱を持っている場合にのみ価値がある、と専門家は言います。

 

歌ったり楽器を演奏したりすることは、一定の人々にとって楽しく、喜ばしい活動です。プロの音楽家によれば、音楽を作ることは爽快であり、美しいメロディーを次々と生み出すスリルは決して飽きることがないといいます。

 

しかし、音楽のキャリアに必要な訓練は厳しいものです。音楽の学士号、修士号、博士号を取得することは容易ではありません。

 

「音楽の学位を取得するのであれば、死に物狂いで練習しなければなりませんが、私が思うに、多くの受験者はあまりこの事実を深く考えていません。学業に加えて、毎日何時間も何時間も楽器に打ち込む必要があるのです。」
と、バーモント・ジャズ・センターのエグゼクティブ・アーティスティック・ディレクターであるユージン・ウーマン氏は言います。

 

マサチューセッツ州のアマースト大学でジャズ・ピアノの講師を務めるユーマンは、これから音楽を学ぼうとする学生たちに、音楽の学位に必要な努力の量を過小評価しないよう勧めます。

 

「ジャズクラブに行って、ただ漫然と音楽を聴くのとは違います。多くの鍛錬が必要なのです。音楽だから、ただ直感的に流れに身を任せるだけでいいと思っている人がいるかもしれませんが、そこには多くの努力が伴います。」

 

音楽の学位を取得するかどうかを決めるには

 

プロの音楽家として成功するには、優れた耳と美しい音を出すコツだけでは十分ではない、と専門家達は言います。

 

「音楽のキャリアを追い求めるのに向いている人というのは、自身の情熱のために段階的かつ体系的な向上を目指して奮闘することができる人でしょう。」
デラウェア大学音楽学部でトランペットの教授を務めるマーク・クロッドフェルター臨時部長は述べます。


「彼らはオリンピック選手と同じように、最高のパフォーマンスへの貪欲さを持ち、反復することに意味を見出すのです。才能は方程式の一部分でしかなく、意欲や粘り強さのほうが勝る傾向があります。もしが “手っ取り早く簡単に一攫千金を狙う“道を探しているのなら、音大は向いていません。」

 

アメリカ労働統計局によると、2020年5月の米国の楽器奏者と歌手の時給中央値は31.40ドルでした。同局は、この分野の人々は仕事を確保するまでの期間が長くなる傾向があり、有償の演奏会を見つけるストレスがミュージシャンであることのマイナス面の1つであると分析しています。同局はまた、演奏者としての仕事を望む人が非常に多いため、この分野での競争は非常に激しいとも指摘します。

 

同局は、音楽の大学や大学院の学位がなくても音楽業界へ入っていく方法はある一方、学位は信頼性を高め、オーディションへの参加が容易になる、という専門家達の見解を紹介しています。

 

一方、音楽ディレクターや作曲家の場合、2020年の年収中央値は52,250ドルであったことがアメリカ労働統計局の数字で示されています。同局は、合唱団のディレクター職には大卒が必須である場合があり、交響楽団の指揮者職には通常修士号が必要であることを示唆していますが、ポピュラー音楽を作曲するソングライターには学位は必要ないと指摘しています。

 

これらの報酬統計を評価する際には、有名な音楽家、指揮者、作曲家が、時には天文学的な報酬を得、億万長者になることもあることを考慮してみてください。特にもしそれがチャート上位のレコーディング・アーティストであればなおさらです。世界的に有名なオーケストラ、合唱団、バンドに所属する演奏家は、何万ドルもの報酬を得ることもあるのです。

 

「クリエイティブな分野における利点というのは、最高のレベルまで実際にたどり着く人にとっては、限界がないことです。」
とクロッドフェルター氏は言います。

 

カリフォルニア州ムーアパーク・カレッジの音楽教授で、指揮者やテノール歌手としても活動しているブランドン・エリオット氏は、楽器奏者や歌手の報酬には大きなばらつきがあり、低賃金、もしくは賃金しか支払われない者もいれば、努力に見合った多額の報酬が支払われる者もいると指摘します。

同時に、カリフォルニアの非営利団体コーラル・アーツ・イニシアチブの芸術監督であるエリオット氏は、ポップスやR&Bのような主流の音楽ジャンルが最も良い賃金レベルである傾向があると話します。大勢の人が消費するところに、お金は集まる、と彼は言います。

 

ピアニスト、作曲家、編曲家であり、『Mary Lou Williams: Music for the Soul(メアリー・ルー・ウィリアムズ:魂のための音楽)』という本を書いた学者でもあるディアナ・ウィトコウスキー氏は、ほとんどのプロの音楽家にとって、音楽家という職業は天職であり、生活のために他のことをすることは考えられないと指摘しています。

 

エリオット氏は、音楽の学士号を取得したからといって、演奏家としてのキャリアを追求する必要はないと考えています。
「音楽を専攻したいと考えているのなら、そうするべきです。あなたに情熱があるのなら尚更でしょう。何の学位を取得したのかが、その後の人生において職業と呼ぶものに直結している必要はありません。」

 

しかし、音楽の大学院を考えている人は、その学位取得を決める前に音楽をキャリアの中心に据えるかどうかを真剣に考えるべきだと彼は言います。

 

ジョージア州の幼児向け私立学校に付属する音楽プログラム、ウィロー・ミュージックのディレクター、アダム・コール氏は、音楽業界の一定の分野では音楽の学位が必須であると指摘しています。

 

「学位は、資格が重要視される分野に入る人には絶対に必要です。オペラをはじめとするクラシック演奏の仕事、ジャズ・クラシック・民族音楽学などを教える仕事、初等・中等教育における音楽教育の仕事などです。」
「ツアー・ミュージシャン、スタジオ・ミュージシャン、プロデューサー、ソングライターなど、エンターテインメント業界で働く人々には、ほとんど必要ありません。」

 

ジョージア州立大学で音楽の学士号と修士号を取得したコール氏は、さらにこう付け加えました。
「私は、エンターテインメント業界で働く人が学位を取得することを必ずしも止めるわけではありません。ネットワークスキルや業界での処世術が身についていれば、学位取得で得た知識によって自身の存在をさらに卓越させることができます。」

 

音楽の学士号が求められる場面

 

ステージで人を楽しませたり、コンサートに出演したりするのが好きで音楽を学ぶことに惹かれる人は多いですが、裏方の仕事も含め、音楽の学位を生かす方法はさまざまです。ここでは、音楽関連の職業のいくつかの例を示しますが、中には専門的な資格が必要なものもあります。

 

  • バンドリーダー
  • 音楽エージェント
  • 音楽教育者または教師
  • 音楽史家
  • 音楽作曲家
  • 音楽演奏家
  • 音楽プロデューサー
  • 音楽プロモーター
  • 音楽学者・研究者
  • 音楽セラピスト
  • 音楽理論家
  • ソングライター
  • サウンドエンジニア

 

専門家によれば、ブロードウェイのショー、映画、交響曲、テレビコマーシャル、ビデオゲームなどでは、オリジナルの音楽が頻繁に必要とされ、それがソングライターの雇用機会を生み出しています。ビジネスに精通し、複数のジャンルの音楽を創作する意欲のあるミュージシャンは、より高い報酬を得る傾向があります。

 

音大とプログラムの種類

音楽の学位は、演奏に特化した音楽院もしくは一般的なカレッジや大学のいずれかで取得することができ、専門家は、それぞれの音楽プログラムのタイプに長所と短所があると言います。

 

エリオット氏は、通常の学部で音楽を専攻する利点は、音楽が自分に合っていないと判断した場合に専攻を変更できる柔軟性があることだと主張します。また、音楽コースの中でも授業を他の分野の授業で補うことができ、音楽業界以外の仕事を見つけやすくなります。

 

音楽学校は、音楽と演奏の技能に重点を置いているため、音楽家になる決意を固め、夢の仕事に就くための訓練に集中したい人に最適だと、エリオット氏は言います。

 

こういった学校では、才能を証明するために、入学希望者にオーディションや作品集の提出を求めることが多くあります。

 

しかし、才能だけではトップの音楽プログラムに入るために十分ではありません。一流の音楽プログラムは、楽譜を読む能力、また、批判的なフィードバックを受け入れる姿勢を基準に受験生を選別する傾向があるからです。

 

ピッツバーグ大学の博士課程に在籍するウィトコウスキー氏は、音楽高等教育の利点のひとつは、技巧を磨くための時間と空間を提供し、指導者を得る機会を与えてくれることだと指摘します。このような学校教育はまた、プロとしての人脈となる同級生や教師とのネットワーク作りの機会も与えてくれると、ニューヨーク市立大学シティ・カレッジでジャズ・ピアノ演奏の修士号を、イリノイ州のウィートン・カレッジでクラシック・ピアノ演奏の学士号を取得したウィトコウスキー氏は考えています。

 

音楽学校は音楽のキャリアのために必須ではありませんが、通常、クラシックやオーケストラの音楽の仕事のためには持っていることが想定されている、とウィトコウスキー氏は説明します。
「だから音楽学校は、ある状況における誰かにとっては意味がありますが、違う状況にある誰かにとっては意味がないのです。」

 

出典:Is a Music Degree Worth It?
https://www.usnews.com/education/best-graduate-schools/articles/is-a-music-degree-worth-it-and-does-it-prepare-you-for-a-music-career

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