ハーバード大学の講義
皆さんこんにちは。JN Language Labです。
一般公開を許す事がなかったハーバード大学の講義が、無料動画サイトYoutubeで見ることが可能となっています。
人気の名誉教授、マイケル・サンデル氏による「正義とは何か」を問う内容です。米国大学の講義風景の参考になるかと思いますので、是非ご覧ください。
http://www.justiceharvard.org/
今回注目したいのは、エピソード9 のアファーマティブ・アクション(積極的格差是正措置)について行った講義内容です。(Michael Sandel (Professor from Harvard University) / Justice: What’s The Right Thing to Do? / Episode 09: “Arguing Affirmative Action” )
1996年に、白人のシェリル・ホップウッドさんがテキサス州にある法律大学院に出願して不合格となりましたが、彼女よりも成績や試験の結果が悪かったマイノリティー・グループの人々が合格したことを不服として、大学側を相手取って裁判を起こしました。
この講義では、何が正解であったのかということを、問題の本質をくみ取り論理的に考える、非常にレベルの高い議論がなされています。
先ず着目したいのが、サンデル教授が講義の指揮を執りますが、大講義室にもかかわらず次々と学生を巻き込んで意見を述べさせていくという授業のスタイルです。前者の学生の発言に対して後者の学生は意見していくので、テンポよく話題が変化していきます。時折論議しているポイントがずれてしまいますが、ハーバード大学の学生が如何に熱心であるかということを映像から実感することができます。
このような授業スタイルは米国では多く、既に小学校の頃から積極的に授業に参加し、意見を求められたら、例え正解ではなくても常に堂々と述べることを訓練させられいます。中学校・高校では部活動の1つとしてディベート大会が盛んであるのも事実です。情熱に満ち溢れて議論をするのはハーバード大学の学生に限ったことではありません。日本の教育環境の中では彼らの様に「自分の思いを伝えるという意味での自己主張をする力」を習得することは難しいでしょう。
もう一つ注目して頂きたい点は、人種差別に関するデリケートな議題をオブラートに包むことなく議論をしているということです。上記で述べた通り、アメリカでは自分の意見を提示することは重要であると早い段階から教育されています。
アメリカは世界のあらゆる国から人が集まった異文化・多文化・多民族の国で、宗教・歴史的背景・風習などが異なる人々間の共通認識は大きな相違がありますし、理解することが不可能な事柄も存在します。しかし、一方の考えを押し付けるということではなく、相手の考えを尊重しつつも自分の考えや姿勢を確固たるものとし、明らかにすることによって、ある種の信頼関係を築くコミュニケーションをとることができるのです。
アメリカの歴史には、奴隷制度や男女差別などといった倫理的道徳的に逸脱した行為がありました。今日、ポジティブディスクリミネーションについて、あえて様々なバックグラウンドを持つ多民族同士が同じステージで意見をぶつけ合い、答えを導き出していくという光景には興味深いものがあります。
島国である日本は、多くが大和民族という単一民族国家であり、異なる宗教・文化・思想に大きく影響されることなく日本国独自の個性を保持してきました。
日本人の特質の一つとして、多くを語ることなく、その環境や空気を感じ取り行われる、日本特有の「察しコミュニケーション」というものがあります。日本の四季・伝統芸能・芸術・歴史的建造物など、自然が作り出した現象においても、人間の手によって造られたものにおいても、決して主張をすることのない美しさや奥ゆかしさを感じ取ることが出来ます。
その形のない繊細な空気感が「察し」と表現され、言葉数が少なくても微々たるサインを送ることによって意思の疎通が出来ます。これほどの接し方をする国はあまり見ることはないので、日本人として、「察しコミュニケーション」は誇りに思うべきコミュニケーション方法です。
しかし、グローバル化が謳われている昨今、見渡せばほぼ日本人という単一民族国家内で訓練されたコミュニケーション能力が、世界で通用するかと言えば疑問を抱きます。
海外留学で多くの考えを吸収し、消化し、それぞれに対して自然と自己表現することが出来る能力を身に着けることで、グローバルな人間に一歩近づくと言えます。
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