○初めに
これまでにACT (American College Testing)やSAT (Scholastic Assessment Test)といった言葉を聞いたことがあるかと思います。しかし、この二つのテストは何が違うのでしょうか?今回の記事では、ACTとSATの違いを分析し、抽出して作成した”11の違い”を説明してきます。さらにまとめとして、どちらを受けるべきか決めるためのヒントを提供します。
○ACT vs SAT:違いは何か?
一目見ても、この二つのテストに違いはありません。ACTとSATは国際的に標準化されたテストとして知られており、米国の教育機関に出願する時の一般的な条件となっています。主に高校3年生を対象としており、各テストでは、大学入学後に必要な様々な領域における能力を測っています(問題解決能力や読解力など)。
米国の全ての大学やカレッジはACTとSATのどちらかの一方のスコアを採用しているため、両方受ける必要はありません。つまり、どちらのテストを受けたとしても、同じ学校に出願することができます。
しかし、この二つのテストの実際の内容はどのようになっているのでしょうか?全く同じではありませんが、2016年にSATが大規模な改訂を行った結果、ACTとSATはこれまで以上に密接な関係をもつようになりました。
以下に二つのテストの特徴を記します。
・類似のセクション(リーディング、数学など)が事前に決められた順序で含まれており、一回の受験で各セクションは一度だけ
・不正解によるペナルティを受けず、加点方式を採用している
・パッセージベースドリーディング(用意されている記事を読んで問題に解答する)とEnglish/ライティングが含まれる(ACTではEnglish、SATではWritingとLanguage、またはWritingと呼ばれる)
これら類似点があるにもかかわらず、多くの点で両テストは異なります。ひとつは、SATはACTよりも全体的な受験時間が多少長いです。さらに、設問数と制限時間はそれぞれのセクションによって異なります。
以下に、ACTとSATの基本的な構造と論理的な違いを簡単にまとめた表を記載します。
ACT | SAT | |
受験時間 | 2時間55分(ライティングなし)
3時間35分(ライティングあり) |
3時間 |
セクションの順序 | 1. English
2. 数学 3. リーディング 4. Science 5. ライティング (任意) |
1. リーディング
2. ライティング&ランゲージ 3. 数学(電卓なし) 4. 数学(電卓あり) |
各セクションの時間 | English:45分間
数学:60分間 リーディング:35分間 Science:35分間 ライティング :40分間 |
リーディング:65分間
ライティング&ランゲージ:35分間 数学(電卓なし):25分間 数学(電卓あり):55分間 |
設問数 | English:75問
数学:60問 リーディング:40問 Science:40問 ライティング :1エッセイ |
リーディング:52問
ライティング&ランゲージ:44問 数学(電卓なし):20問 数学(電卓あり):38問 |
スコアリング | 合計スコア範囲:1-36
各スコア範囲が1-36となっており、最終スコアは4セクションの平均値を使用。
任意のライティングセクションの範囲は2-12であり、最終スコアには換算されない。 |
合計スコア範囲:400-1600
各セクションのスコア範囲は200-800であり、最終スコアは各セクションの合計点を使用。 |
費用 | 63ドル(ライティングなし)
88ドル(ライティングあり) |
60ドル |
採用している教育機関 | 米国にあるすべての大学とカレッジ | 米国にあるすべての大学とカレッジ |
ACTとSATの違いは上記に載っているものだけなのでしょうか?そんなことはありません!実際、この二つのテストは全く異なるものです。これらの違いは何かを11の観点でまとめ、さらに記事の最後にはこれらの違いがあなたにとってどのような意味をもつのか記述しました。
#1: 各質問毎にかける時間
時間制限があるテストは嫌いですか?そうであるなら、あなたはACTよりもSATを好むかもしれません。なぜなら、SATはACTよりも1問あたりの解答時間が長いからです。
以下の表は、各テストにおける「一問にかけられる解答時間」を示しています(一つのセクションの中で全て同じ時間をかけて解答すると想定した場合)。
ACT | SAT | |
Reading | 53秒/1問 | 75秒/1問 |
ACT English/SAT Writing | 36秒/1問 | 48秒/1問 |
Math | 60秒/1問 | 電卓なし:75秒/1問
電卓あり:87秒/1問 |
Science | 53秒/1問 |
表からわかるように、SATでは全てのセクションでより多くの時間を使うことが出来ます。特に、SATの数学とReadingセクションにおいては、より多くの時間をかけることができます。さらに、SATの数学(電卓あり)に関しては、ACTの数学セクションよりも30秒ほど多く時間が割り当てられています!
したがって、もしあなたが特に数学において時間管理に不安があるなら、SATの方がより取り組みやすく、時間に対するストレスも少ないでしょう。
#2: “Scienceセクション”の有無
そのほかの大きな違いとしては、Scienceセクションの有無です。ACTは、ほとんどの時間を費やすScienceセクションを含んでいますが、SATにはありません。
上記で挙げたACTとSATの違いを参照すると、ACTのScienceセクションは40問/35分間です。他の三つのACTセクションと同様に、Scienceセクションは全体の4分の1の配点を含んでいます。そのため、もしあなたが科学的なデータやグラフ、仮説などに精通しているのであれば、あなたはよりACTに合っているかもしれません。
とはいえ、SATでは、リーディング、ライティング、数学のセクションで、科学的な文章、データ、図表を扱う問題が出題されることがあります。以下は、試験当日に出題される可能性のある、科学的な文章を扱ったSATリーディングセクションの例です。
ご存知のように、SATにはACTのようなScienceのスコアはありませんが、Analysis in Science cross-test scoreのスコアがあり、これはSATで与えられる多くのサブスコアのうちの1つです。ほとんどの学校はSATのサブスコアはあまり重視しませんが、ACTのScienceの点数は考慮する可能性があります。
#3: 電卓使用不可の数学サブセクション
すべての数学の問題で電卓を使うことができるACTと異なり、SATの数学には電卓を使うことができない「電卓なし」のサブセクションがあります。20問で構成される電卓なしのサブセクションは、たった25分で、SATで最も短いセクションとなっています。(一方で、電卓ありのサブセクションは55分38問で構成されています)。
そのため、計算問題を早く解くことや電卓なしで解くことが苦手な人は、SATの数学よりもACTの数学の方が良い結果を出せるかもしれません。一方、数学に自信があり、電卓なしで早く解ける場合は、SATが有力な選択肢となります。
しかし、ACTとSATの両方とも、技術的にみるとすべての数学の問題(電卓あり、なし)は電卓なしで解くことができます。つまり、電卓なしの問題は、電卓ありの問題とそれほど変わりません。しかし、電卓なしの問題は、電卓なしで解きやすくするために、一般的に数学的よりも推論的な問題になっています。
#4: 数学のコンセプトの種類とバランス
数学の内容に関しては、ACTもSATも代数学にかなり重点を置いています。しかし、ACTでは、SATではあまり重視されていないコンセプトもテストされます。
まず、ACTでは幾何学に重点を置いており、ACT 数学セクションの約30~45%を占めています。一方、SATの数学の問題で幾何学が占める割合は10%未満です。また、三角法はACTでは約7%ですが、SATでは5%未満です。したがって、ACTではSATよりも多少三角法に重点が置かれています。
また、ACTでは、SATでは全く出題されないコンセプトもいくつか出題されます。例えば、行列、三角関数のグラフ、対数などです。
では、これらはあなたにとってどのような意味を持つのでしょうか?代数やデータ分析が得意な人は、SATで良い結果を出せる可能性があります。しかし、三角関数や幾何学が好きで、行列や対数に慣れているのであれば、ACTの方がよい選択となります。
#5: 数学の公式の有無
SATでは数学の公式の図が用意されていますが、ACTでは用意されていません。
SATの数学の2つのサブセクションの前に、12の幾何学公式と3つの法則を含む図が与えられます。
これらの公式や法則はすべて幾何学に関係するものですが、ご存知のように、SATでは大きな割合を占めていません。この図があれば、事前に公式を覚えるのに多くの時間を費やす必要はありません(ただし、図に含まれていない重要な公式は暗記しておく必要があります)。
SATと違い、ACTは試験当日に公式が出題されないので、受験前にすべての公式を暗記する必要があります。
要するに、公式を忘れてしまうかもしれないという心配がある場合、SATはACTより取り組みやすくなるのです。
#6:ファイナルスコアにおける数学の重要性
数学は、最終的なスコアにどの程度影響するのでしょうか?
この質問の答えは、あなたがACTとSATのどちらを受験するかによって異なります。ACTでは、数学は総スコアの4分の1を占めます(数学のセクションのスコアは、他の3つのセクションのスコアと平均されます)。しかし、SATでは、数学は総スコアの半分を占め、SATの2倍の重要性を持ちます。
そのため、もし数学が苦手なら、ACTを選ぶことを検討してください。ACTでは、数学のスコアが低くても、SATのように合計スコアに大きな影響を与えることはありません。
このことをより明確に説明するために、例を見てみましょう。もし、ACTとSATで同じようなパーセンタイルで得点し、Mathセクションの得点がかなり低かったとしたら、両試験の合計パーセンタイルはほぼ同じになると思うかも知れません。しかし、以下に示す通り、これは事実ではありません。
- 英語: 32 (92パーセンタイル)
- 数学: 16 (35パーセンタイル)
- リーディング: 32 (91パーセンタイル)
- Science:30 (93パーセンタイル)
- コンポジット: 28 (88パーセンタイル)
- EBRW:700 (94パーセンタイル)
- 数学:460 (31パーセンタイル)
- コンポジット:1160点(69パーセンタイル)
この例からわかるように、ACTとSATのすべてのセクションで同じようなパーセンタイルであったとしても(Mathセクションのスコアはどちらも低かったとしても)、コンポジットのパーセンタイルは大きく異なることになります。この場合、最終的なACTのパーセンタイルはSATのパーセンタイルより19%高くなります。
つまり、数学が苦手な人は、SATよりもACTの方が、希望する合計点数に到達する可能性が高いということです。
#7:数学の選択肢の数
SATとACTは、数学の選択肢の数にも違いがあります。
SATとACTの数学セクションは、どちらも多肢選択式が主流です。しかし、ACTの数学では、各問題に5つの選択肢(A-EまたはF-K)があるのに対し、SATの数学では4つ(A-D)しかありません。
注意点として、どちらのテストも権利のみの採点加点方式を採用しており、誤答で減点されることはありません。つまり、SAT Mathの問題を推測で解いた場合、正解する確率は25%です。しかし、もしあなたがACTの数学の問題を推測していたとしたら、正解する確率は20%しかないでしょう。
したがって、数学で推測が必要かもしれないと思う場合、SATはACTよりも5%高い確率で問題を正解することができ、ごくわずかに有利であることを知っておいてください。
#8:グリッドイン方式による数学の問題
もしあなたが多肢選択問題、特に数学の問題が好きなら、ACTを好むかもしれません。
SATは、ほとんどが多肢選択式ですが、記述問題、またはグリッドイン(数値をマークして解答する方式)があり、自分で答えを記入しなければならない数学の問題があります。言い換えれば、これらの問題では答えの選択肢がないのです。
グリッドインはSAT Mathの22%を占め、電卓なし(5つのグリッドイン)と電卓あり(8つのグリッドイン)のサブセクションで合計13問出題されます。一方、ACT Mathは多肢選択問題のみです。答えの選択肢がない数学の問題が苦手な方は、ACTの方があっているといえるでしょう。
#9:根拠を裏付ける読解問題
あなたは、質問に対する答えの根拠を、文章の中でピンポイントで見つけることが得意ですか?もしそうなら、SATの方があなたに合っているかもしれません。
SATのリーディングでは、根拠を示す問題は重要な位置を占めていますが、ACTのリーディングでは全く見られません。これらの質問は、前の質問の答えの根拠として、特定の行または段落を引用するよう求めます。
以下は、根拠を示す質問の例です(参照する質問も記載します)。
このガイドでは、SATリーディングで出題される様々なタイプの証拠問題について詳しく説明します。特に、文章中のどこに答えがあるのか分からない場合、根拠問題はやや厄介です。もし、相互に関連した問題が好きでないなら、代わりにACTを試してみてください。
#10: 時系列に沿った読解問題
SAT Readingでは、すべての問題は時系列にそって出題されます。しかし、ACTリーディングでは、問題はランダムに出題され、パッセージの内容の順番通りにならないことがあります。
以下はSATの2つの問題の例ですが、パッセージの順番に進んでいるのがわかります(両問題の行番号で示されています)。
そして以下は、パッセージの順番通りに進まないACT問題の例です。
結果として、SATのリーディング問題は、一般的にACTのリーディング問題よりも分かりやすく、解答しやすくなっています。また、時系列に並んだ問題は、SATでは、問題が言及している箇所を文章全体から探す必要がないため、時間の節約にもなります。
#11: 任意の小論文
2つのテストの最後の大きな違いは、任意の小論文についてです。ACTでは、小論文があり、選択することができますが、2021年夏以降、SATでは小論文が廃止されました。
ACTで小論文の部分を選択した場合、ある問題についての短い文章を読み、その問題についてのさまざまな視点を分析します。そして、その文章で取り上げられた問題について、自分の意見を述べます。
以下は、ACTのWritingの文章の例です。
この任意のライティングセクションでは、著者の主張の長所と短所を十分に理解するための優れた読解力だけでなく、強力な修辞学的スキルも必要になってきます。ですから、もしあなたがACTの任意のエッセイを受験することに決めたら、問題に対する異なる視点を効果的に比較対照し、自分の意見を支える十分な証拠を示すことができる必要があります。
○ACTとSAT:どちらのテストが自分に合っているか?
いよいよ、ACTとSATのどちらが自分に合っているのか、自問自答するときが来ました。ここで、あなたの決断を助ける3つの方法を紹介します。
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方法1:公式模擬試験(Official Practice Tests)を受ける
ACTとSATのどちらが得意かを推測するのではなく、実際にそれぞれのテストを受けてみて、スコアを比較するのが一番良い方法です。そのためには、ACTとSATの両方の公式模擬テストを見つける必要があります。公式の模擬テストは、本番に最も近いものです。
ここであなたがすることは、各試験の公式模擬テストを1つ選び、それを受ける日を決めることです。注意点として、各テストは約4時間かかるので、中断することなく各テストを完了できるように十分な時間を確保しましょう。同じ日や2日続けて受験しないようにしましょう。また、静かな場所で受験し、実際の試験と同じように時間を計ってください。
両方の模擬試験を終えたら、それぞれの採点ガイドを使ってACTとSATのスコアを計算し、比較しましょう。スコアを比較する最も簡単な方法は、変換システムを使って、ACTテストの合計スコアをSATテストの合計スコアに変換することです。
また、ACTとSATのスコアのパーセンタイルを比較し、どちらのテストのパーセンタイルが高いかを確認することもできます。最終的には、どちらのテストのスコアが高かったか把握し、大学入試のために準備し、使用することです。
もし、ACTとSATのスコアがほぼ同じなら、どちらのテストでも同じように良い成績を修めるでしょう。ですから、両方のテストを受けるか、片方だけを受けるかは、あなた次第です。
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方法2:SATとACTのクイズに挑戦する
どちらのテストが自分に合っているかを判断するもう一つの方法は、簡単なクイズに参加することです。以下の表で、それぞれの文章に賛成か反対かをチェックしてください。
項目 | 賛成 | 反対 |
幾何学と三角法が得意ではない | ||
電卓を使わずに数学の問題を解くのが得意だ | ||
科学は得意ではない | ||
自分の意見を説明するよりも、何かを分析する方が簡単だ | ||
数学のテストは大抵うまくいく | ||
数学の公式を簡単に思い出すことができない | ||
数学の問題では、自分で答えを導き出すのが好きだ | ||
時間の制約があるとストレスになる | ||
自分の答えを裏付ける証拠を簡単に見つけることができる | ||
時系列にに沿った問題の方がわかりやすい |
では、各欄のチェックマークを数えて、あなたのスコアが何を意味するのか確認してみましょう。
ほぼ賛成 – SATはあなたにマッチしています!
もし、あなたが上記の記述のほとんど、またはすべてに同意したのなら、SATが合っています。SATでは、一問一問にかける時間が長く、厄介な科学セクションや大量の幾何学問題に対処する必要はありません。
ほとんど賛成できない – ACTはあなたのためのものです!
もし、あなたがほとんど、あるいはすべての意見に反対であれば、SATよりもACTを好む可能性が高いでしょう。ACTでは、数学の問題で自分で答えを考える必要はありませんし、作文で自分の意見を主張することができます。
賛成と反対が同じ –どちらのテストでも大丈夫です!
もし、「同意する」と「同意しない」に同じ回数だけチェックを入れたなら、ACTかSATのどちらもあなたに合っていると思います。両方受験するのでなければ、上記1で紹介したACTとSATの公式模擬試験を受けて、最終的にどちらのテストの形式に慣れるかを確認することをお勧めします。
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方法3:あなたの州のテスト要件を考慮する
最後に、あなたの州が特別な試験条件を設けているかどうかを確認することを忘れないでください。州によっては、すべての高校生にACTまたはSATの受験を義務付けているところもあります。このような場合、他のテストのために勉強する必要がないように、通常、あなたの州で要求されるテストにの対策をするのが最善策です。
ACTを義務付けている州は11州あります:
アラバマ州
ハワイ州
ケンタッキー州
ミシシッピ州
モンタナ州
ネブラスカ州
ネバダ州
ノースカロライナ州
ユタ州
ウィスコンシン州
ワイオミング州
SATを必須としている州は10州あります:
コロラド州
コネチカット州
デラウェア州
イリノイ州
インディアナ州
メイン州
ミシガン州
ニューハンプシャー
ロードアイランド州
ウェストバージニア州
さらに、アイダホ州、オハイオ州、オクラホマ州、サウスカロライナ州、テネシー州では、卒業手続きの一環としてテストを要求していますが、これらの州では、SATまたはACTを選択することができます。
出典:PrepScholar,”ACT vs SAT: 11 Key Differences to Help You Pick the Right Test”
https://blog.prepscholar.com/act-vs-sat
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