【SAT】SATの変更点について知っておきたいこと
〇初めに
マークシートを塗り潰したり、試験監督が試験用紙を回収するのを待つ必要はもうありません。SATはデジタル化されるとともに、その他いくつかの変更も行われます。
しかし、これらの変更は一夜にして行われるものではありません。まず初めに、2023年に海外で受験する学生に対して新しい形式が導入され、その後2024年に米国で開始される予定です。
SATをはじめとする共通テストやカリキュラムを開発する非営利団体であるカレッジボードで、大学進学準備評価部門の副総長を務めるプリシラ・ロドリゲス氏は、「私たちは、学生や教育関係者から、SATを受けるのはどのようなものか、学生にSATを受けさせるのはどのようなものか、意見を聞いてきました」と言い、「テストの厳正やストレス、長さの一部は、デジタル化しなければ変えることができません」と述べています。
〇SATとは?
SATは、高校生の「大学進学適性」を予測することを目的とした多肢選択式の試験です。多くの大学は、成績や課外活動、推薦状、エッセイに加え、SATのスコアを見て、入学可否を決定します。
非営利の教育団体であるカーンアカデミーの創設者で最高経営責任者のサル・カーン氏は、「あなたはACTやSATの点数で表せるものではなく、点数以上の価値があります。大学入試のカウンセラーと話をすれば、そのことに同意するはずです。しかし、学校ごとに成績評価の方法が異なるこの世界においては、SATのような試験は少なくとも、大学レベルの勉強をする準備が整っているかどうかのシグナルを与えてくれるでしょう」と述べています。
一部の学校は、共通テストのスコアを入試に大きく反映させない方向に変わってきています。コロナウイルスの大流行により、多くの学生がテストを受けることへの障壁を経験しました。
また、テストの結果には人種間の格差があるということはよく知られており、それが大学への入学権利の格差を広げていると多くの人が指摘しています。非営利団体のブルッキングス研究所の報告によれば、2020年の高校卒業生では、白人学生では60%近くが数学で大学入学基準に達した一方で、黒人学生の4分の1以下、ヒスパニックまたはラテン系学生の3分の1のみが基準に達したといいます。
擁護団体フェアテストによると、1800校以上の4年制大学が2022年秋学期からテスト・オプショナル制(共通テストのスコアを提出するかは学生の自由)に移行する計画を発表しています。
〇SATの変更点
SATでは、新しくデジタル化されること以外に、試験の短縮化、数学パートでのグラフ電卓使用許可、結果公表の迅速化などの調整も行われます。
モンタナ州ホワイトフィッシュ高校のキャリアカウンセラー兼教師であるロス・リングル氏は、「全体として素晴らしい変更で、生徒の現状に合っていると思います」と言い、「大学側がテスト・オプショナル制になってきているので、SATが適切なものであり続け、より親しみやすいものにするのに役立っていると思います」と述べています。
全面的な見直しがおこなわれたものの、SATは引き続き、1600点満点でリーディング・ライティング・数学の3科目に関する力をテストします。
以下は、今後のSATの重要な変更点です。
〇デジタル形式
新しいデジタルテストは、学生の出来に応じて後続の問題の難易度が変わる適応型のものになります。これにより、テストのセキュリティが向上するとロドリゲス氏は言います。
デジタル形式とはいえ、自宅で受ける持ち帰りの試験ではありません。試験は引き続き、試験監督の監視のもと、授業日や週末に実施されます。
しかし今回は、学生は自分のノートパソコンやタブレットを持参するか、学校支給の機器を使用する、あるいはカレッジボードが提供する機器を借りることができます。
また、デジタルテストは、ブロードバンドの問題や停電が起きた際にも、学生の作業内容が失われないように設計されています。
〇試験日にかかる時間の短縮
始まりから終わりまで、学生と教育者双方にとって、試験日全体の時間が短縮されます。
試験時間は3時間から2時間に短縮されます。そして、デジタル化されたことで、試験監督も問題を梱包、整理、発送する手間が省けます。
また、問題もより簡潔になる予定です。例えば、長いリーディングの文章は、より短いものに置き換えられます。各リーディングに関する問題は、複数ではなく、ひとつだけになります。
「学生に豊富な文章を読み、理解し、分析し、関連質問に回答してもらいたいことに変わりはありませんが、このような文字量の多い文章はデジタル機器上では上手くいきませんでした」とロドリゲス氏は言います。
〇電卓の使用許可
現在のSATの数学セクションでは、電卓使用不可の部分と電卓を使用できる部分の2つに分かれています。しかし、今回の変更で、数学の全パートで電卓が使用できるようになりました。
学生は、自分のグラフ電卓を持参するか、試験に付属している電卓を使用することができ、専門家によれば、これによって試験当日の障壁を減らすことできるといいます。グラフ電卓の平均価格は100ドル~200ドルで、中にはもっと安いものもありますが、全ての学生が買えるわけではありません。
〇スコア結果の迅速化
デジタルテストでは、何週間も結果を待たされることなく、数日後にスコアレポートを受け取ることができます。
スコアレポートには通常、パーセンタイルランキングとスコアの内訳が掲載されています。また、4年制大学や奨学金に関する情報も提供されてきました。新しい形式では、カレッジボードは、地域コミュニティカレッジ、労働訓練、キャリアの選択肢に関する情報にまで範囲を広げる予定であるとロドリゲス氏は言います。
〇SATの変更による影響
SATは、「いちかばちかの(大きな賭けの)」試験と考えられており、多くの学生が良い成績を取らなくてはとプレッシャーを感じています。しかし、カレッジボードによると、11月に行われたデジタル版の試験運用では、参加者の80%が新しい形式は紙のテストよりもストレスが少なくなったと感じたといいます。
ロドリゲス氏は、「私が望むのは、学生たちが試験会場に来て、リーディング・ライティング・数学の分野で学んだことや彼らのできることを(実力)を示すことだけに集中できるようにすることです。そして、試験にまつわる多くのストレスや厳しさ、方針などを解消したいのです」と述べています。
試験に関する障壁はストレスだけではありません。SATは以前から、公平性にまつわる批判に直面してきました。申し込みにかかる費用によって、より高いスコアを獲得するための再受験が制限されることがあるのです。また、受験準備のために高額な個人指導を受けられる学生がいる一方で、多くの学生は練習や指導をあまり受けずに受験しています。
このような問題を軽減するため、カレッジボードは長年にわたり無料の準備資料の提供や受験料の免除、平日試験などを実施してきました。しかし、SATのオンライン化に伴い、この新たな変更が試験へのアクセスや不公平性に対応できるかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれています。
COVID-19により、ほとんどのK-12(幼稚園年長~高等学校卒業)の学校が何か月もオンラインで過ごしたことを考えると、全米の学生はデジタル形式での学習や受験に慣れたといえるでしょう。しかし、紙形式の方が成績が良い学生も残っていると、教育コンサルティング会社IvyWiseの大学入試カウンセラーであるクリスティン・チューは言います。「学習上の問題を抱えた学生への対応がどうなるかは、まだ完全には分かっていません」と彼女は言い、「これらの新しい変更が学生全体にどのような影響を及ぼすについては、まだ疑問符が残ります」と話しています。
専門家の中には、時間の短縮・提供される機器や道具・試験日の柔軟性により、デジタル形式は試験へのアクセスを改善することができると予測する人もいます。「私たちの学校の学生のような地方学生にとって、試験の機会はかなり減少していました」とリングル氏は言います。また、「試験の実施機会が減少した理由のいくらかは、旧試験の長さと、準備時間や試験会場への移動にかかる時間などの試験運営上の課題です。それが試験監督者を敬遠させてしまうのです。短時間で実施でき、梱包や説明責任を負う試験用紙の数も少なくて済むので、学生が自分の地域で受験できる機会が増えると思います」と話しています。
他の専門家は、この変更が個々の学生にどのような影響を与え、既存の人種間格差に対処できるかを判断するには時期尚早だと躊躇しています。
〇準備の仕方
専門家は、全米の大学でテスト・オプショナル制を採る学校が増えているにもかかわらず、可能であればSATかACTのどちらかを受験するよう学生に勧めています。大学入試サービス会社Princeton Reviewの編集長であるロバート・フラネック氏は、「SATやACTを受験して、そのスコアに満足ができない場合は、テスト・オプショナルの権利(テスト・オプショナル制ではSATやACTの提出は義務ではない)を行使して提出せずにおきましょう。けれども、そのスコアが、あなたにとって価値があり、大学出願時に差別化要因になり得るのであれば提出しましょう」と述べています。
試験対策には、全米の試験対策会社、家庭教師、独学用のオンライン教材など、いくつかの選択肢があります。例えば、Khan Academyは、ウェブサイト上で模擬試験や動画、テスト戦略などを無料で提供しています。
カレッジボードは、試験開始日が近づいたら、学生が新しいデジタル形式の試験と機器を体験できるよう、模擬試験を公開する予定です。
Ivywiseのチューターであるジョーイ・ラドゥは、「カレッジボードのウェブサイトで提供されているものを見て、(公開され次第)模擬試験をすぐに受けてみて下さい」と述べています。また、「それまでの間、コンピューター上で試験を受けるのがどのような感じなのかについて興味を持っている学生は、暫定的にACTのコンピューターベースの練習テストを受けるという選択肢もあります。しかし、そうでなければ、今のところ、まだ不確実性が高いので待っていましょう」と話しています。
記事:The SAT is Changing: Here’s What to Know
https://www.usnews.com/education/articles/the-sat-is-changing-heres-what-to-know
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